
CTやMRI、X線撮影装置など、病院で当たり前のように使われている大型医療機器。
普段、患者として病院を利用しているだけでは「医療機器にも納期がある」ということを意識する機会はほとんどありません。
しかし2026年、国内大手メーカーのメディカル事業で、製品供給に大幅な遅れが発生しました。それが、キヤノングループのメディカル事業です。
公式情報はこちらです。
キヤノン 2026年第2四半期 決算説明会資料
https://global.canon/ja/ir/conference/pdf/conf2026q2j-note.pdf?utm_source=chatgpt.com
キヤノン 2026年第2四半期 決算説明会 Q&A
https://global.canon/ja/ir/conference/pdf/conf2026q2j-qa.pdf?utm_source=chatgpt.com
キヤノンメディカルシステムズ公式サイト
https://jp.medical.canon/?utm_source=chatgpt.com
■ キヤノンのメディカル事業で何が起きたのか
キヤノンは2026年7月27日に行われた第2四半期決算説明会で、メディカル事業について、「顧客への製品供給に大幅な遅れが生じている」ことを明らかにしました。
原因は、大きく2つあります。
1つ目が、2026年4月に実施した「生産システムの切り替え」に伴う不具合。
そしてもう1つが、「調達先の被災」による部品調達の遅れです。
医療機器は非常に多くの部品から作られています。そのため、たった一つの重要部品が届かなくても完成品を出荷できない場合があります。
今回も、生産に必要な部品を予定通り調達できなかったことで、製品の供給に大きな遅れが発生しました。
■ 影響は「約150億円」
驚くのは、その影響の大きさです。
キヤノンによれば、この生産トラブルによる売上へのマイナス影響は、
・2026年第2四半期:約150億円
・2026年下期:約250億円
と見込まれています。
さらに、年間の利益に対しても約200億円のマイナス影響を想定しています。
メディカル部門の2026年第2四半期売上高は1,354億円で、前年同期の1,420億円から4.6%減少。営業利益も51億円から31億円へ38.5%減少しました。
新興国では大型商談を獲得するなど好材料もありましたが、それを生産・供給の遅れが打ち消してしまった形です。
■ なぜ医療機器の納期遅延は深刻なのか
「納期が少し延びるくらいなら問題ないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし医療機関にとって、医療機器の納期遅延は一般の商品とは意味が違います。
例えば、病院が古いCTを新しいCTへ入れ替える計画を立てていたとします。
新しい装置の納入日に合わせて、古い装置の撤去、工事、搬入、設置、検査、スタッフへの操作説明など、多くのスケジュールが組まれています。
そこで新しいCTが予定通り届かなければ、計画全体を変更しなければなりません。
場合によっては、古い医療機器を予定より長く使用する必要も出てきます。
医療機器は「注文して届けば終わり」という商品ではありません。
病院経営や診療計画、設備工事まで含めた大きなプロジェクトなのです。
■ 世界的に難しくなる「部品を安定して確保すること」
今回の問題で注目したいのが「調達」です。
現在のCT、MRI、超音波診断装置などには、半導体をはじめ非常に多くの電子部品が使われています。
キヤノン自身もサプライチェーン上のリスクとして、部品・材料の供給不足や物流停滞などによって製品の生産が遅れ、顧客への納品遅延につながる可能性を挙げています。
つまり医療機器メーカーの競争力は、単純に「性能のいい装置を作れるか」だけではありません。
必要な部品を確保し、
「必要な時に、必要な台数を作り、病院へ届けられるか」
というサプライチェーンの力も、これまで以上に重要になっています。
■ そして注目される「中古医療機器」
ここからは中古医療機器に携わる立場として、少し違った角度から考えてみます。
新品医療機器の納期が長期化すると、相対的に価値が高まる可能性があるのが中古医療機器です。
例えば、新品の納品まで数カ月待たなければならない一方、状態の良い中古機器なら短期間で導入できるケースがあります。
もちろん医療機器ですから、何でも中古で代替できるわけではありません。保守対応、部品供給、設置条件、法規制などを確認する必要があります。
それでも「新品が届くまで待つ」という選択肢だけではなく、
「良質な中古機器を活用する」
「現在使用している機器を延命する」
「新品が届くまで中古機器を利用する」
といった選択肢の重要性は、今後さらに高まるかもしれません。
■ 医療機器も「作れば売れる」時代ではない
キヤノンは今回、取引先と部品納期の前倒し交渉を行い、2026年9月には生産をおおむね正常化させる計画を示していました。
ただし、2026年10月初旬時点で確認できる公開情報からは、その正常化が計画通り完了したかまでは確認できません。
今回の出来事が教えてくれるのは、医療機器業界でも「サプライチェーン」が経営を左右する時代になったということです。
どれほど優れたCTやMRIを開発しても、部品がなければ製品は完成しません。
そして新品の供給が不安定になれば、中古医療機器や既存設備の延命という選択肢にも新しい役割が生まれます。
新品と中古を対立するものとして考えるのではなく、
「必要な医療機器を、必要な医療現場へ止めずに届ける」
という視点で両方を組み合わせる。
医療機器の世界でも、そんな時代が近づいているのかもしれません。
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