
Netflixで2026年9月17日から世界独占配信が始まったドラマ『ダウンタイム』が話題を集めています。
松岡茉優さん演じる外科医・沼田文と、仲里依紗さん演じるカリスマ美容外科医・遠山凜。華やかな美容整形の世界を舞台に、「美しくなりたい」という人間の願いと、その裏側にあるお金や欲望を描いたヒューマンサスペンスです。
タイトルの「ダウンタイム」とは、美容医療の施術後に起こる腫れや内出血などが落ち着くまでの回復期間のこと。
Netflix公式
https://www.netflix.com/jp/title/81603806
では、ドラマではなく「現実の美容医療業界」はどうなっているのでしょうか?
実は今、驚くほど大きなお金が動く一方で、クリニックの淘汰も始まっています。
■ 美容医療は「3,000億円市場」へ
東京商工リサーチによると、全国の主な美容クリニック248法人の2024年売上高は合計3,137億5,900万円。
2022年の2,119億6,700万円から、わずか2年間で約1.5倍になりました。
「美容整形は一部の人が受けるもの」という時代から、二重整形、医療脱毛、シミ治療、ボトックスなどを含め、美容医療が身近な「自己投資」へ変化してきたことが背景にあります。
では、その巨大市場のトップにはどんなクリニックがいるのでしょうか。
■ 現実の「美容医療の帝国」売上規模BEST5
公開されている決算・報道などから売上規模を比較すると、代表的な大手は次のようになります。
【1位】湘南美容クリニックなど/SBCメディカルグループ
約1,700億円(2024年度・経営支援先クリニック全体)
https://www.s-b-c.net/
国内外で圧倒的な規模を誇る最大手。2026年1月時点で、SBCが経営支援するクリニックは国内外282院に達しています。
【2位】TCB東京中央美容外科
約681億円(2024年2月期・主要運営法人)
https://aoki-tsuyoshi.com/
約100院を展開する大手。SNS広告や若年層向けの施術などを武器に急成長しました。
【3位】品川美容外科・品川スキンクリニック/翔友会
約407億円
https://www.shinagawa.com/
1988年創業の老舗。長い歴史と全国規模の知名度を持つ、美容医療業界を代表するグループです。
【4位】東京美容外科など/麻生美容クリニックグループ
グループ年商200億円超
https://www.tkc110.jp/
東京美容外科など全国100院以上の自由診療クリニックを展開するグループで、年間売上は200億円以上と公表されています。
【5位】ゴリラクリニック/医療法人社団十二会
154億5,413万円(2025年9月期)
https://gorilla.clinic/
男性美容医療の大手。2024年9月期の約123億円から、2025年9月期には約154.5億円へ伸びています。
※重要:医療法人は上場企業のように統一された連結決算を公表しているわけではありません。また「ブランド売上」「運営法人売上」「経営支援先全体」など集計範囲も異なるため、これは厳密な公式ランキングではなく、公開情報から見た「売上規模の参考比較」です。
■ あの「高須クリニック」は?
美容整形と聞いて、高須クリニックを思い浮かべる人も多いでしょう。
https://www.takasu.co.jp/
1976年開院という日本美容医療のパイオニア的存在です。
ただし、現在の医療法人についてSBCやゴリラクリニックのように比較可能な最新売上決算は公開情報から確認できませんでした。
過去には高須克弥院長がグループ年商約60億円規模と語ったと報じられており、2026年にはフジテレビが高須氏について「生涯売上5,000億円以上とも言われる」と紹介しています。
つまり、高須クリニックは「店舗数や売上を急拡大するチェーン型」というより、長い歴史と高い知名度を持つ美容医療ブランドとして見るほうが実態に近いでしょう。
■ 成長しているのに、なぜクリニックが潰れる?
ここからが『ダウンタイム』の世界とも重なる、美容医療の「影」です。
東京商工リサーチによると、美容クリニックの「休廃業・解散+倒産」は2015~2023年まで年間1~5件で推移。
確認できる直近では、
2022年 5件
2023年 1件
2024年 7件
となり、2024年は過去10年間で最多。内訳は休廃業・解散3件、倒産4件でした。
さらに2024年には、医療脱毛で知られた「アリシアクリニック」の運営法人が約72億9,500万円の負債を抱えて破産。多くの利用者に影響を与えました。
2025年にも美容クリニック「RAISE CLINIC」の運営法人が破産するなど、淘汰は続いています。
ただし注意したいのは、2025年・2026年について「美容クリニックだけ」を2024年までと全く同じ基準で年間集計した公表データは、現時点では確認できないことです。
そのため「2025年○件、2026年○件」と推測で数字を埋めることは避けるべきでしょう。
■ なぜ売上が伸びているのに苦しいのか?
理由の一つが「広告費」です。
美容医療は基本的に保険が適用されない自由診療。患者さんに選んでもらうため、テレビCM、検索広告、SNS、インフルエンサーなどに大きなお金が使われます。
さらに好立地の家賃、医師や看護師の人件費、最新医療機器への投資、輸入薬剤・医療材料の値上がりも経営を圧迫します。
実際、2024年の248法人は売上約3,138億円に対して利益約82.7億円。単純計算した利益率は、わずか約2.6%です。
市場が1.5倍に成長したからといって、「美容クリニック=簡単に儲かる」というわけではないのです。
■ 『ダウンタイム』の先に見える、美容医療のリアル
Netflix『ダウンタイム』が描くのは、美しくなりたい人々だけではありません。
その願いをビジネスにする「巨大な美容医療産業」でもあります。
市場は3,000億円を超え、最大手は年間1,000億円を超える規模になった。一方では、価格競争、広告費、人件費、医療機器への投資によって経営に行き詰まり、姿を消すクリニックもある。
「美しくなりたい」という欲望がなくならない限り、美容医療市場そのものも簡単にはなくならないでしょう。
しかしこれからは、「開業すれば儲かる時代」ではなく、技術、安全性、ブランド、価格、そして経営力まで問われる時代。
美容医療業界にも、まさに今、大きな「ダウンタイム」が訪れているのかもしれません。
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