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“ナフサ不足”が医療業界に与える影響

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2026年に入り、エネルギー価格や物流費の高騰と並んで、産業界で深刻な問題となっているのが「ナフサ不足」である。一般の生活者にはあまり馴染みのない言葉かもしれないが、実はこのナフサ不足は、医療業界にも大きな影響を及ぼし始めている。
病院や診療所における医療行為は、医師や看護師だけで成り立っているわけではない。注射器、点滴バッグ、手袋、薬剤包装、検査キット、防護具など、膨大な“石油化学製品”に支えられている。そして、その原料の中心にあるのがナフサだ。
本稿では、ナフサ不足とは何か、なぜ今問題になっているのか、そして医療業界にどのような影響を与えているのかを整理したい。


ナフサとは何か
ナフサとは、原油を精製する過程で得られる炭化水素の一種で、石油化学産業の基礎原料である。プラスチック、合成樹脂、化学繊維、ゴム製品など、多くの工業製品の原材料として利用されている。
医療業界においても、ナフサ由来の製品は非常に多い。
代表例を挙げると、
注射器
点滴バッグ
カテーテル
マスク
医療用手袋
医薬品容器
検査用チューブ
PPE(個人防護具)
錠剤包装(PTPシート)
などがある。
つまり、ナフサ不足は単なる化学業界の問題ではなく、「医療インフラの問題」でもある。


なぜナフサ不足が起きているのか
背景には複数の要因が重なっている。
1.中東情勢の不安定化
原油供給地域である中東の地政学リスクが高まり、石油精製の安定供給に不透明感が生じている。
2.脱炭素政策の加速
世界的な脱炭素の流れの中で、石油化学設備への投資が抑制されている。結果として、生産能力の余裕が減少している。
3.アジア需要の急増
中国やインドなどで化学製品需要が増加し、アジア全体でナフサ需給が逼迫している。
4.国内石油精製能力の低下
日本国内では製油所の統廃合が進み、生産余力が以前より小さくなっている。
これらが複合的に作用し、医療資材メーカーのコスト構造を大きく揺さぶっている。


医療現場で起きていること
医療材料価格の上昇

最も直接的な影響は、医療材料価格の高騰だ。
例えば、ディスポーザブル製品(使い捨て製品)はプラスチック原料依存度が高い。注射器や点滴関連製品の価格改定はすでに進行しており、一部メーカーでは10~20%規模の値上げも見られている。
しかし、日本の医療機関は自由価格で診療報酬を設定できない。
診療報酬は国が定めるため、材料費だけが上昇しても、病院側の収益には反映されにくい。つまり、「コストだけが増える」という構造になっている。これは特に中小病院や慢性期病院にとって深刻だ。


病院経営への圧迫
近年の病院経営は、
人件費上昇
電気代高騰
給食費増加
医薬品価格上昇
など、複数のコスト増に直面している。
そこへナフサ不足による医療材料高騰が加わることで、経営圧迫はさらに強まっている。
特に問題なのは、医療材料は「削減しづらいコスト」である点だ。
例えば、
注射器の使用量を減らす
感染対策用品を減らす
点滴関連資材を節約する
といったことは、患者安全上ほぼ不可能である。
つまり病院側は、高騰した価格を受け入れるしかない。
この状況は、すでに赤字体質に陥っている地方病院にとって極めて厳しい。


医薬品供給への波及
ナフサ不足は医療材料だけでなく、医薬品供給にも影響を及ぼす可能性がある。
医薬品製造では、
プラスチック容器
包装資材
化学溶媒
合成原料
などが必要になる。
これらの供給不安は、医薬品生産全体の遅延につながる恐れがある。
日本では近年、後発医薬品メーカーの品質問題による供給不足が続いているが、そこへ原材料問題が重なることで、「医薬品不足の長期化」が懸念されている。


感染対策へのリスク
コロナ禍を経て、医療現場では感染対策資材の重要性が再認識された。しかし、マスクやガウン、防護具の多くは石油化学製品で構成されている。
もしナフサ不足が深刻化すれば、
供給遅延
価格高騰
在庫不足
が発生する可能性がある。
医療機関では現在、コロナ禍の教訓から「一定量の備蓄」を進めているが、長期的な不足に対応できるとは限らない。特に災害時や感染症流行時には、供給網の脆弱性が一気に表面化する。


医療DX推進にも影響
一見関係なさそうに見えるが、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)にも影響は及ぶ。半導体製造には石油化学製品が多用されるため、ナフサ供給不安は電子部品価格にも波及する。
その結果、
電子カルテ端末
医療機器
検査装置
サーバー関連設備
などの価格上昇につながる可能性がある。

医療DXを推進したくても、設備投資コストが増加すれば、特に地方病院では導入が遅れる恐れがある。


求められる「医療供給網」の再構築
今回の問題は、日本医療が“海外原料依存”で成り立っている現実を改めて浮き彫りにした。
今後必要になるのは、
医療材料の国産化推進
サプライチェーン分散
国家備蓄の強化
リサイクル技術の高度化
バイオ素材活用
など、中長期的な供給網再構築である。
また、診療報酬制度についても、急激な原材料高騰に対応できる柔軟な仕組みが求められるだろう。


まとめ
ナフサ不足は、一見すると化学業界だけの問題に見える。しかし実際には、医療現場の日常を支える多くの製品に直結している。
医療は「人」で成り立つが、同時に「物資」でも成り立っている。
そして、その物資供給が不安定になれば、医療提供体制そのものが揺らぐ可能性がある。
人口減少、高齢化、人材不足、地域医療崩壊――。
ただでさえ課題の多い日本医療にとって、ナフサ不足は新たな経営リスクであり、供給リスクでもある。
いま必要なのは、単なるコスト削減ではなく、「医療を支える産業基盤」をどう守るかという視点なのかもしれない。


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