先週(2026年6月1日)に放送されたTBSの人気番組「クレイジージャーニー」で話題となった小川康さんとチベット医学について調べてみました。
クレイジージャーニーとは
『クレイジージャーニー』は、TBS系列で2015年(平成27年)4月17日から断続的に放送されている紀行バラエティ番組。
世界を巡る狂気の旅人(クレイジージャーニー)をスタジオに招き、体験を語ってもらったり、番組スタッフと同行ロケをする。取り上げる題材は少数民族、深海生物、東南アジアの漂流族やマンホールタウン(地下生活)など、マニアックなものが多い。
冒険家、ジャーナリスト、写真家、作家、経営者などさまざまな職業の人物が「クレイジージャーニー」として登場しており、故人を取り上げることもある。
基本的にすべて日本人だが、日本在住の外国人を取り上げることもある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%BC
クレイジージャーニー☆日本唯一の資格を持つ薬草研究家&昆虫コンビ島田・丸山登場
2026年6月1日 (月)
https://www.tbs.co.jp/tv/20260601_ADD4.html
薬草がつなぐ人と自然の知恵 ― クレイジージャーニーで話題となった小川康さんとチベット医学の世界
2026年6月1日放送のTBS「クレイジージャーニー」で、多くの視聴者に強烈な印象を残した人物がいる。薬草研究家であり、日本で唯一のチベット医(アムチ)の資格を持つ小川康さんだ。
番組では、標高3,000メートルを超えるヒマラヤ山中での過酷な薬草採集実習や、チベット医学の神秘的な世界が紹介され、大きな反響を呼んだ。現代医療が高度化する一方で、小川さんの活動は「人と自然の関係」を改めて考えさせるものだった。
薬草に魅せられた日本人
小川康さんは富山県出身。東北大学薬学部を卒業し、薬剤師資格を取得した後、薬草や自然教育に関わる仕事を経験した。
一般的には薬剤師として病院や薬局で働く道もあったが、小川さんは植物そのものが持つ力や、人々が古くから培ってきた薬草利用の知恵に強く惹かれていった。
転機となったのは、チベット医学との出会いだった。
チベット医学は約1,300年以上の歴史を持つ伝統医学であり、インド医学、ペルシャ医学、中国医学などの影響を受けながら独自に発展した体系である。小川さんはその奥深さに魅了され、1999年にインド北部のダラムサラへ渡った。
その後、チベット亡命政府が運営するチベット医学暦法大学「メンツィカン」に挑戦する。外国人にとって極めて難関とされる入学試験を突破し、チベット文化圏以外の外国人として初めて入学を果たした。
番組では、合格までの過程として、毎日10時間以上に及ぶチベット語学習が紹介された。医学を学ぶ以前に言語の壁を乗り越えなければならず、その努力は想像を超えるものだった。
命がけの薬草実習
番組の中でも特に印象的だったのが、ヒマラヤで行われる薬草実習である。
チベット医学では、薬草を単なる材料として扱うのではなく、「どこに生え、どの季節に採取し、どのような環境で育ったか」を重視する。
そのため学生たちは毎年、高山地帯へ入り、薬草採集の実習を行う。
標高3,000メートルを超える山岳地帯では酸素も薄く、天候も急変する。しかも規定量の薬草を採取するまで下山できないという厳しいルールがある。
現代の医学教育では教室や病院で学ぶことが中心だが、チベット医学では自然そのものが教科書となる。
小川さんは番組内で、「薬草を知るには山に入らなければならない」という趣旨の言葉を語っていた。実際に植物を見て、触れ、香りを感じ、その生育環境を体感することで初めて本当の知識になるという考え方だ。
この姿勢は、効率化が進む現代社会において忘れられつつある「現場から学ぶ力」を象徴しているようにも感じられる。
チベット医学とは何か
では、チベット医学とはどのような医療なのだろうか。
チベット医学の基本思想は、人間を自然の一部として捉えることにある。
病気は単に臓器の異常として発生するのではなく、生活習慣や感情、食事、気候とのバランスが崩れた結果として現れると考える。
その中心となる概念が「ルン」「ティーパ」「ベーケン」という三つのエネルギーである。
簡単に言えば、
・ルン=風(神経や精神活動)
・ティーパ=火(消化や代謝)
・ベーケン=水と土(身体の構造や安定)
であり、これらの均衡が健康を保つ鍵とされる。
診察では脈診や問診、尿の状態などを総合的に観察し、患者の体質や生活環境を把握する。
治療法は薬草だけではない。
食事療法、生活指導、瞑想、運動なども重要な治療手段として位置づけられている。
つまりチベット医学は、「病気を治す医学」というよりも「健康を維持するための生活哲学」に近い側面を持っているのである。
現代医療との共通点と違い
もちろん、感染症治療や救急医療、外科手術などの分野では現代医学が圧倒的な力を発揮する。
一方で、慢性的な不調や生活習慣病、ストレス関連疾患が増える現代社会においては、チベット医学が重視する予防や生活改善の視点にも大きな価値がある。
興味深いのは、小川さん自身が薬剤師として現代医学を学びながら、チベット医学も修得している点である。
彼は伝統医学と現代医学を対立するものとして捉えていない。
むしろ両者の長所を理解し、人間の健康を多面的に考える姿勢を持っている。
その姿は、医療が専門分化する時代だからこそ重要な視点を私たちに与えてくれる。
失われつつある薬草文化を未来へ
現在、小川さんは長野県上田市で「森のくすり塾」を主宰し、薬草や伝統医療に関する教育活動を続けている。
日本にもかつては、身近な植物を薬として活用する豊かな文化があった。しかし都市化や生活様式の変化により、その知識は急速に失われつつある。
小川さんが伝えようとしているのは、単なる薬草の知識ではない。
自然を観察する力、人と植物との関係、地域に根付いた知恵の価値である。
クレイジージャーニーで紹介された小川康さんの歩みは、一見すると特殊な冒険譚のように見える。しかしその本質は、「人は自然とどう向き合うべきか」という普遍的な問いへの挑戦なのかもしれない。
AIや最先端医療が進歩する時代だからこそ、ヒマラヤの薬草や伝統医学が持つ知恵に耳を傾ける意義は大きい。小川さんの活動は、医療の未来を考える上でも重要な示唆を与えてくれるだろう。
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