2026(令和8)年6月1日、診療報酬改定が施行されます。
2年に1度の定期見直しであるこの制度ですが、今回の改定はいつもと一味違います。背景にあるのは、終わりの見えない「物価高騰」と医療現場の「深刻な人手不足」です。今回の改定が私たちの生活や財布にどう影響するのか、患者目線で知っておくべきポイントを優しく解説します。
1. なぜ今、医療費が変わるのか?
私たちが病院の窓口で支払う医療費の元となる「診療報酬」は、国が定める医療サービスの価格表です。今回は医療従事者のベースアップ(賃上げ)や、光熱費・食材費の高騰に対応するため、全体としてプラス改定(引き上げ)となりました。
医療の質と現場の労働環境を守るためのやむを得ない措置ですが、結果として私たちの窓口負担や入院費にも小幅な変動が生じることになります。
2. 外来受診:初診・再診で「数十円」の微増へ
普段の通院において、最も身近な変化が「窓口負担」の変動です。
- 初診・再診の価格がシフト
物価高対策として「物価対応料」などが新設されたため、3割負担の現役世代の場合、初診時で数十円〜100円程度、再診時で数十円程度、支払いが上乗せされるケースが出てきます。 - 「一律」ではない点に注意
医療機関がどのような設備や人員体制を整えているか(施設基準)によって、加算される金額が異なります。そのため、「どこの病院に行っても全く同じ金額だけ上がる」というわけではありません。「いつもと同じ治療なのに少し高くなった?」と感じたら、会計時に受け取る診療明細書を確認するか、窓口で尋ねてみるのが確実です。
3. 入院時の食費が「1食730円」に引き上げ
直近で入院の予定がある方や、ご家族が療養されている方にとって無視できないのが、入院中の「ごはん代(食事療養費)」の改定です。
- 1食につき40円の負担増
これまでの1食690円から、1食730円へと引き上げられました。 - 積み重なると大きな差に
1日3食で計算すると毎日120円、10日間の入院で1,200円、1ヶ月(30日)なら3,600円の負担増となります。
なお、この引き上げは食材費の高騰によるもので、病院が独自に値上げしたのではなく国のルールによるものです。※住民税非課税世帯など、所得に応じた軽減区分がある方は対象外となります。
4. 嬉しい緩和も!「いびき・睡眠不足」の治療が受けやすく
負担増の話ばかりではありません。今回の改定では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な治療法である「CPAP(シーパップ)治療」の保険適用基準が大幅に緩和されました。
- これまでは「重症」しか対象外だった
これまでは、簡易検査で非常に高い数値(AHI 40以上)が出なければ、外来でのCPAP治療に保険が適用されませんでした。 - 新基準でハードルが低下
6月からは簡易検査で「AHI 30以上」、精密検査で「AHI 15以上」へと基準が引き下げられます。
これまで「いびきがうるさい」「日中の眠気がひどい」と悩みつつも、検査で「保険適用外」と言われて諦めていた方にとって、手軽に治療を始められる大きなチャンスが到来したと言えます。
5. 【先読み】2026年後半〜2027年にかけての「次の波」
さらに、2026年5月末には「医療保険制度改革法」が国会で成立しました。今すぐではありませんが、私たちの生活に直結する以下の制度改革が順次控えています。
- 高額療養費制度の見直し(2026年8月〜)
医療費が高額になった際に上限を超えた分が返ってくる制度ですが、現役世代の月額上限が段階的に引き上げられます。一方で、長期療養者のために「年間上限」が新設されるなど、メリハリのある改定になります。 - 市販薬に似た薬(OTC類似薬)の負担増(2027年春〜予定)
湿布や保湿剤、一部の解熱鎮痛剤など「薬局で買える薬と同じ成分の処方薬」について、医療費の3割負担とは別に、一定の追加負担を求める案が調整されています。
まとめ:変わりゆく医療制度とどう付き合うか?
2026年6月の改定は、日々の通院や入院において「数十円〜数千円」のジワジワとした負担増を実感するものになりそうです。
しかしこれは、日本の優れた国民皆保険制度を未来に残し、医療現場の崩壊を防ぐための防衛策でもあります。制度の仕組みを正しく理解し、マイナ保険証を活用して医療DXの恩恵を受けるなど、賢く医療と付き合っていきましょう。
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