
「本や洋服を売るために、わざわざリユースショップへ行く」。
そんな常識が、いよいよ変わろうとしています。
2026年8月、ファミリーマートとブックオフは、全国約16,000店舗のファミリーマートからブックオフの宅配買取商品を発送できる「ファミマでかんたん!ブックオフ買取」を8月25日から開始すると発表しました。
利用者は専用サイトから申し込み、売りたい商品を箱に詰めてファミリーマートへ持っていくだけ。つまり「コンビニに行くついでに中古品を売る」という新しい生活動線が生まれることになります。
実はこの動き、突然始まったものではありません。
ブックオフは2026年2月、ファミリーマートの親会社でもある伊藤忠商事と資本業務提携を締結。伊藤忠商事はブックオフグループホールディングスの株式5.01%を取得し、提携内容の一つとして「ファミリーマート店舗網を活用したリユース品の仕入強化」を掲げています。
さらに4月には、東京都内のファミリーマート約30店舗に衣料品・雑貨の回収ボックス「R-LOOP」を設置。開始から約3か月で回収量は4.5トンを突破しました。
これは、中古品市場が「一部の人が利用する市場」から、コンビニと同じような生活インフラ型ビジネスへ変わり始めていることを象徴する出事ではないでしょうか。
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2026/20260819_01.html
中古市場はすでに約3.5兆円
リユース市場そのものも拡大しています。
環境省の調査によれば、2024年の国内リユース市場規模は、自動車を含めて約3兆4,986億円。自動車を除いても約1兆5,772億円あります。2030年には約4兆円規模まで拡大するとの民間予測も紹介されています。
背景にあるのは、フリマアプリの普及だけではありません。
物価上昇による「新品より安く買いたい」という需要、環境問題への意識、SDGsやサーキュラーエコノミー(循環経済)の浸透、そして「まだ使える物を捨てるのはもったいない」という価値観の変化です。
今後は小売、物流、金融、商社などの大企業が、それぞれの店舗網や物流網、会員基盤を活用してリユース市場へ参入するケースがさらに増えていくでしょう。
では、ここで一つ疑問が浮かびます。
「それなら、なぜ中古医療機器市場には大手企業が次々と参入してこないのか?」
中古医療機器は「買って、売れば終わり」ではない
最大の理由は、中古医療機器が一般的な中古品とはまったく違う商品だからです。
中古の本や洋服なら、商品の状態を査定し、価格を決め、次の購入者へ販売することができます。
しかし医療機器の場合、その機械が正常に作動するかどうかは、患者の診断や治療、場合によっては生命にも関わります。
さらに法律上も一定のルールがあります。
例えば、高度管理医療機器や特定保守管理医療機器を販売・貸与するには原則として営業所ごとの許可が必要です。管理医療機器についても一定の場合、販売・貸与業の届出が求められます。
そして中古医療機器を販売・賃貸する際には、製造販売業者への通知と、その製造販売業者からの指示に基づく適切な対応が必要となります。
つまり中古医療機器ビジネスでは、「仕入れる → 値段を付ける → 売る」だけでは完結しません。
機器の履歴確認、正常動作の確認、清掃・消毒、メーカーへの中古品通知、必要に応じた修理・整備、撤去、輸送、設置、アフターサービスなど、多くの専門業務が絡みます。
「商品知識」ではなく「専門人材」が必要
ここも一般リユースとの大きな違いです。
例えば中古のブランドバッグなら、真贋判定や相場を判断できる査定スタッフを育成することで店舗展開を広げられます。
ところが医療機器には、CT、MRI、超音波診断装置、内視鏡、人工呼吸器、生体情報モニター、手術機器など、膨大なカテゴリーがあります。
同じカテゴリーでもメーカーや型式、年式によって性能、保守状況、部品供給、ソフトウェア、海外での需要が違います。
「100万円で買った機械だから50万円で売れる」という世界ではありません。
新しくても市場価値が低い機器がある一方、古くても海外で非常に需要の高い機器もあります。
この相場を判断するには、一般的なリユースの査定ノウハウだけでは足りません。
さらに大型装置では、撤去費用や輸送費だけで数十万円からそれ以上になるケースもあり、「買い取ったけれど売れない」という在庫リスクも大きくなります。
だからこそ、大量仕入れ・大量販売を得意とする大企業にとっても、簡単に規模を拡大できる市場ではないのです。
実は大手企業が「いない」わけではない
ただし、大手企業がまったく中古医療機器を扱っていないわけではありません。
例えばオリックス・レンテックは、医療機器のレンタル、リースに加えて中古機器販売も展開しています。同社は医療機器修理業の許可を取得した専門チームを置き、2026年1月時点で約140社のメーカーを取り扱っています。
またGE HealthCareも、自社製画像診断装置を再生して販売する「GoldSeal」という中古再生プログラムを展開しています。単なる中古販売ではなく、サービス履歴を確認した機器を選別し、OEM基準で整備し、保証やアフターサービスまで組み合わせています。
つまり正確には、「大手企業が参入していない」のではなく、「専門知識のない異業種大手が簡単には参入できない」市場なのです。
そして、ここが中古医療機器市場の面白いところでもあります。
ファミマ×ブックオフの次に起きること
ファミリーマートとブックオフの取り組みが示しているのは、今後のリユース市場では「商品を売る力」以上に、不要品を集める仕組み=仕入れ網が重要になるということです。
中古医療機器も本質的には同じです。全国の病院やクリニックでは、毎年大量の医療機器が入れ替えられています。しかし一般リユースのように、
「簡単に査定できる」「簡単に運べる」「誰にでも販売できる」という商品ではありません。
だからこそ、医療機器の知識、メーカーとの関係、撤去・物流網、整備能力、国内外の販売網を持つ企業に価値があります。
ファミリーマート×ブックオフによって「コンビニで中古品を売る」時代が始まる一方、中古医療機器市場では、まだ専門企業が重要な役割を担っています。
しかし、リユース市場全体が4兆円へ向かい、企業にサーキュラーエコノミーへの取り組みが求められる時代です。
商社、金融、物流、医療機器メーカーなどが、専門企業への出資やM&A、業務提携という形で中古医療機器市場へ入ってくる可能性は十分あります。
実際、オリックスは2025年、循環器領域の医療機器販売会社APEXホールディングスを完全子会社化しています。
もしかすると中古医療機器市場でも、ファミリーマート×ブックオフのような「業界の壁を越えた大型提携」が登場する日は、それほど遠くないのかもしれません。
記事内企業・参考サイト
株式会社ファミリーマート
ファミリーマート公式サイト
ブックオフグループホールディングス株式会社
BOOKOFF GROUP HOLDINGS公式サイト
伊藤忠商事株式会社
伊藤忠商事公式サイト
オリックス・レンテック株式会社
オリックス・レンテック公式サイト
GE HealthCare Japan
GE HealthCare Japan公式サイト
厚生労働省
厚生労働省公式サイト
環境省
環境省公式サイト
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